新型コロナ感染確認者の発生状況について

第四話

「外出自粛」にすがるときに考えたいこと、について述べます。個人の生活から社会の経済活動に至るまで極めて大きな影響を及ぼす「外出自粛」の根拠は、人と人との接触を極力減らすことにより感染拡大を抑えることとのことでした。4月7日に東京はじめ7都府県を対象とし、16日には全国に対象が広げられました。

 大切なことなので繰り返します。日毎の新規患者は4月12日をピークに減少期に入っています(上図)。
 このピークは4月7日の緊急事態宣言による自粛要請の効果が出ると思われる1週間から10日後より早いので、すでに減少基調にあったと考えられます。

 さて、これからですが、2002年から2003年にかけて中華人民共和国を中心に流行したSARSのように1シーズンに感染が広域に拡大 する中でピークが二山になるような可能性(上図:https://www.who.int/csr/sars/epicurve/epiindex/en/index1.html)は、日本国内で感染が地方に拡大する流れがよほど強くならない限り現実には低いと思われるかもしれません。
 しかしウイルスの変異する性質上、4月12日のピークの1~2ケ月後にもう一度感染者数急増によるピークを迎える可能性は否定せずに、起こったら起こった時だ、と腹をくくっておくことです。

【隔離と行動制限】
 善良な人々の中には、外出自粛の日々を「東日本大震災を思い出せば、たいていのことは我慢できる」と思って過ごしている人も少なくないのではないかと思います。もちろん個人の視点として、お上の言うことに素直に従って耐え忍ぶその心意気は健気で心打たれるのですが、あの時と今との違いは、東日本大震災では日本の大半の地域は無事だったことです。それにより人的・物的に東日本は支えられました。
 今は、日本は言うに及ばず、世界中が外出制限・自粛し鎖国して経済活動が収縮しています。期限次第では一人ひとりの善意の行動がやがて日本のそして自分の首を絞めることになるのです。まさに“合成の誤謬”を生むことになる可能性があります。
 身近に目を向ければ、中小企業、飲食店、観光業、芸術関係など、すでに生活が立ち行かなくなって失業、廃業、転業が出ています。今さら言うまでもなく、外出自粛の期限は社会活動のダメージとのバランスが極めて大きいのです。ですのでここはバランスをとることを念頭において考えていきたいものです。

 今の“外出自粛”を緩和するときに、感染拡大を減らす方策として、発熱している人を導線を分け別の外来でPCR検査を増やし、軽症者を病院外で隔離するという意見があります。筋が通っているように思われるかもしれません。例えば、37台の軽い発熱があり、指示された自宅待機中に外出して感染を広げたり、症状が急速に悪化して自宅あるいは救急搬送先の病院で死亡したり、といったことを防げると。
 しかしこの意見が現実的でないことを説明します。
 まず、軽い発熱、喉の痛みや違和感、咳・くしゃみなどを起こす要因は風邪症候群(いわゆる風邪)、インフルエンザ、肺結核などの感染症、自己免疫疾患、白血病などの悪性腫瘍、等々あげたら切りがありません。しかも風邪症候群ひとつとっても新型コロナとは比較にならないくらいたくさん発症します(風邪症候群だけでも全国の15歳以後の人が年平均1.4回、つまり季節変動を無視して単純計算すれば毎日平均43万人!)。
 次に第一話でも触れましたが、今のPCR検査の新型コロナ検出上の問題があります。
 新型コロナウイルスのある人(真陽性)をちゃんと陽性と判定できた割合を、「感度(真陽性率)」と言います。また、新型コロナでない人(真陰性)を陰性と判定できた割合を「真陰性率(特異度)」と言います。「感度」も「特異度」も、そして陽性の人が本当に感染している率(「感染的中率」)の髙いことが理想ですが実際には、以下に述べることを考えないといけません。

 様々な報告がなされてきましたが、検体の取り方や場所、感染からの経過日数により陰性と出てしまう偽陰性が3~4割といわれています。また感染していなくても、あるいは他の疾患により陽性と出てしまう偽陽性があります。こちらの具体的な数字はわかりません。 
 つまり、「感度」は70%~60です。一方、仮に偽陽性を1割とすると「特異度」は90%です。実際の手順は省きますが、「感度」と「特異度」が変わらない限り、検査をうける人が感染している確率(「検査前確率」)が低いと偽陽性率がたいへん高く(「陽性的中率」が低く)なってしまいます。ですので闇雲に検査を増やすと実際よりはるかに多く“陽性者”が出てしまいます。
 PCR検査はあくまでも目安なのです。ですので、感染者の発見に力を入れる方策として“PCR検査の急拡大”にすがるのは注意が要ります。感染者による感染症病床の占拠率が高まる中、日本感染症学会と日本感染環境学会も4月17日、臨床現場に向けて発表した「新型コロナウイルス感染症に対する臨床対応の考え方」において「軽症者に対しては、現状の帰国者・接触者相談センターを介した検査体制の中では基本的にPCR検査を推奨しない」と述べています。
 外出自粛を「命を守るためにStay (at) home!」=「家の外に出ない」と解釈している人がいるようですが、外出自粛の趣旨は、他者との接触を減らすことにより感染伝播、罹患率を下げ他者と自分の健康を守ることです。ですので、いつも家の中に閉じこもるのではなく、人の少ない時、少ない場所で太陽の光を浴び、気分溌剌となり、また活性化ビタミンDを増やし(太陽により活性化される)免疫能を上ことが重要です。

 今、新型コロナに脅威を抱く理由の一つとして、「インフルエンザと違って新型コロナには(まだ市場に)ワクチンも薬もない」というのがあるようです。ですが、その「ワクチンも薬もある」インフルエンザ関連死は年1万人ほどと言われています。まだ今の医療ではウイルスそのものを“消す”ものはないのです。結局は私たちのからだの力によるのです。ですので日々の生活が大事です。当たり前の事ばかりですが再掲します。
【食事】 
 自然塩 
 緑黄色野菜(ニンジン、ほうれん草、トマトなど:抗酸化作用)
 ビタミンC(果物)   ビタミンD(鮭、ヨーグルト、みかん、卵)
 発酵食品(納豆、味噌、醤油、漬物    玄米(含:酵素玄米、発芽玄米) 
【運動】 適度だと免疫系が賦活する
【睡眠】 眠っているときに感染に対する免疫系が賦活する
【穏やかな心持】 
【保清】 うがい、手洗い  【入浴】 保清、リラックス、免疫賦活
【人との交流(孤立しない) 】 

 なお、去年の暮から現在までの経過中、中華人民共和国、フランス、次いでアメリカでマラリアの特効薬(クロロキン、ヒドロキシクロロキン)単剤、あるいは抗生剤のアジスロマイシンとの併用療法の有効性が報告されてきました。ウイルスが細菌に感染して、その細菌が生体に感染症を発症する可能性を示唆するたいへん重要な結果です。これからの進展が、感染してしまった人達の光明になるかもしれません。こちらについては別の機会に取り上げたいと思います。
ここまでお読みくださりありがとうございます。