新型コロナ感染確認者の発生状況について

第三話

 「欧米に近い外出制限を」という意見が“感染症の専門家”やメディアはじめ様々なところで耳にします。感染症だけを考えれば、感染伝播を防ぎ、効果がありそうな感じがするかと思います。しかし長期間の厳しい移動制限は個人の心身へのダメージから始まって、社会活動の委縮、はては経済の崩壊へと繋がることは言わずもがなです。

 ここでは、“日本は本当に欧米に近い外出制限が必要”かどうかを見ていきたいと思います。繰り返しになりますが、各国のデータの取り方や信頼性はここでは問題にせず前2回と同様にWHOのデータを用います。

 まず、主要国の感染の様子を知るために、死亡者が感染者に占める割合(%)を3枚の図に示します。上段は、この割合が高く、経過とともに上昇していく“高増加群”のヨーロッパの国々を、中段はこの割合が“高増加群”ほど高くないが経過とともに上昇していく“中増加群”、そして下段はこの割合が低く、かつ経過とともに直線的に増加する傾向があきらかでない“その他群”と便宜上分けました。
 高増加群(ヨーロッパの7カ国)では3月上旬~中旬から死亡者/感染者の割合が直線的に増加し、4月23日現在、すべて10%以上という高率です。
 中増加群は、ヨーロッパの9カ国と、アメリカ、ブラジルです。高増加群よりも感染の立ち上がりが遅く、3月中旬から下旬にかけて死亡者が増加し、死亡者/感染者の割合が高増加群ほどではないが直線的に増加して、4月23日現在、3~6%台です。
 その他群は、中華人民共和国や韓国のように3月には感染者数も死亡者数もほぼ横ばいのため死亡者/感染者の割合も横ばいの国、オーストラリアのように一旦3%まで増加後に漸減し1%ほどで横ばいの国、日本やトルコのように一旦2~3%まで増加後に漸減し再び微増している国、インドのように3月中旬から2%ほどで推移している国、そして残りの3月中旬から下旬にかけて死亡者/感染者の割合が直線的に微増している国々(ロシア、イスラエル、チリ、パキスタン、ノルウェー)、が見られます。
 今、世間の脅威となっているヨーロッパの国々と日本とでは死亡率でみた場合、まったく別物のように見えます。世界で検出された新型コロナウイルスの遺伝子解析により3種類に分けられるという報告が米国からなされました(https://www.pnas.org/content/early/2020/04/07/2004999117)。
 ウイルスは伝播につれて人の体内で自然に変異していきます。この変異による型の違いを追うことで感染経路や広がりを知ることができます。

  この図は、右下のコウモリ(BAT)から遺伝子の変化をたどったものです。BATに近いAタイプは中華人民共和国、日本から米国、ヨーロッパ、オーストラリアまで広がっています。Aタイプから分かれたBタイプは中華人民共和国から東アジア、米国に広がっています。このBタイプから分かれたCタイプはヨーロッパ、米国、ブラジル、東アジアに広がっています。
 つまり、ヨーロッパで猛威を奮っているウイルスと日本のそれとでは遺伝子型、つまり種類が異なります。つまり、これまでのところでは、日本がいきなり欧米のようになるとは考えにくいと言えます。
 日本は発生源の中華人民共和国からの渡航者を2月いっぱいまで大量に受け入れ、彼らと同じAタイプが広がっているにも関わらず、中華人民共和国からの渡航者の多い他の国々とは全くことなり感染者が発生しませんでした。
 ようやく、2月27日の政府の「小中高の休校要請」、その後3月10日の「歴史的緊急事態」への指定などで世間が騒がしくなるにつれて、ぼつぼつ感染者が出てくるようになりました。ここまでの経緯は欧米の一部に“Japan paradox”という表現を生むほど彼らにとって不思議だったようです。世間は、「いつか欧米のようにたいへんなことになる」というメディアに煽られてきましたが、去年からこの半年近い経過を客観的に見たいものです。この考察は日を改めて述べたいと思います。

 次に、はたして今の時期の“外出制限”の効果があるのか、について述べようと思っていたところ、たいへんよい記事が昨日の「アゴラ」に出ていました(http://agora-web.jp/archives/2045626.html)。
 各国の感染者の推移を曜日による凸凹をその日と前後3日ずつとを加えた7日間を平均した“7日間移動平均”を用いることでより滑らかな曲線を得ているのがポイントです。図をお借りします。
 各国の新規感染者数は概ねベル(鐘)のような形になっているのがわかります。図中の白い菱形で示されているのが各国における外出制限発令の日です。 
 ドイツを除いていずれも急激な増加前に発令されています。ですが、その後2週間ほど急激に増加してピークを迎え、緩やかに減少しています。
 日本は4月7日に緊急事態宣言により外出自粛要請が出ていますが、前回もお示ししたとおり4月12日にはピークを迎えています(『日毎の新規感染者と新規死亡者』の図を参照)。なお、死亡者については感染後のタイムラグがあるのでこれからの推移を見ていけばよいかと思います。
 結局、緊急事態宣言に関わらず、新規感染者の自然減少のフェーズに入りつつあったといえるでしょう。ここで大切なのは、「アゴラ」の筆者の方が言われていたように外出自粛の止め時を実体経済の視点からリスクベネフィットを分析判断できる計量経済学の専門家に政府の意思判断のための専門家委員会に入っていただくことだと思います。
 さらに、文中でも申しましたようにウイルスの変異については予測困難ですので、状況把握をしながら臨機応変に軌道修正できるよう遺伝子工学領域の専門家チームの参加も必要かと思います。このへんは私たち庶民とは離れますが、方向性が見える様申しました。

 各国の感染者の推移を曜日による凸凹をその日と前後3日ずつとを加えた7日間を平均した“7日間移動平均”を用いることでより滑らかな曲線を得ているのがポイントです。図をお借りします。

 各国の新規感染者数は概ねベル(鐘)のような形になっているのがわかります。図中の白い菱形で示されているのが各国における外出制限発令の日です。 
 ドイツを除いていずれも急激な増加前に発令されています。ですが、その後2週間ほど急激に増加してピークを迎え、緩やかに減少しています。
 日本は4月7日に緊急事態宣言により外出自粛要請が出ていますが、前回もお示ししたとおり4月12日にはピークを迎えています(『日毎の新規感染者と新規死亡者』の図を参照)。なお、死亡者については感染後のタイムラグがあるのでこれからの推移を見ていけばよいかと思います。 結局、緊急事態宣言に関わらず、新規感染者の自然減少のフェーズに入りつつあったといえるでしょう。ここで大切なのは、「アゴラ」の筆者の方が言われていたように外出自粛の止め時を実体経済の視点からリスクベネフィットを分析判断できる計量経済学の専門家に政府の意思判断のための専門家委員会に入っていただくことだと思います。
 さらに、文中でも申しましたようにウイルスの変異については予測困難ですので、状況把握をしながら臨機応変に軌道修正できるよう遺伝子工学領域の専門家チームの参加も必要かと思います。このへんは私たち庶民とは離れますが、方向性が見える様申しました。
 ここまでお読みくださりありがとうございます。