新型コロナ感染確認者の発生状況について

第七話

5月10日
新型コロナ感染確認者の発生状況について(7話目) 5月1日の感染症専門家会議の提言から=新規感染者は4月はじめから減少に転じています。

【我が国と世界の感染状況】
人々の不安・恐怖を煽る要因として新型コロナが猛威を奮っている欧米のようになるのではないか、といことについて3話目で述べました。結論は、「日本は欧米のようにはならないでしょう」でした。
さて、メディアが欧米の“大流行”を煽る中で、3月19日「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(以下:専門家会議)」は、接触機会を減らして医療崩壊を防ぐために“国民の行動変容”を提言しました。3月25日、小池百合子東京都知事が政府に先走って「ロックダウン」「ステイホーム」を連呼し、外出自粛を強く要請しました。多くの国民は、「感染しない、させない」という自利利他的な標語が合言葉となって、集団催眠にかかったかのように“外出自粛・休業”にすがりつきました。
そして、政府も4月7日に「専門家会議」の提言や世間の同調圧力により目標(解除の基準や期限)を定めずに “緊急事態宣言” を発出し、外出自粛等要請をしました。そして5月4日、政府は専門家会議の提言に従い、再び解除の基準や期限を定めずに「緊急事態宣言」を延長しました。
 日々資金繰りに四苦八苦し、解除の日を一日千秋の思いで待ちわびた人達にとって、政府のこのような先の見えない先延ばし策は辛いものです。

このような状況を引き起こした新型コロナウイルス感染症について現況を概観します。

 まず事実確認をします。感染者数の多い欧米と日本の間の流行の違いについてみて行きます。
第1話で同趣旨の図をお出ししてから1月近く経つので、7日移動平均(*)値に置き換え、アップデートして再掲させていただきます。上の「国別・新型コロナ新規感染者数(100万人当たり)」の図をご覧ください。
*:曜日などによる統計処理のばらつきを平均化するために当日とその前後3日の数字を足して7で割ったもの

 欧米と日本とを比較すると、これらの国々の山の高さ(感染者数)が日本(ほぼ平坦にみえる)と桁違いであること、アメリカを除くと日本も含めてこのような国々で新規感染者数のピークを過ぎて減少に転じていることがわかります。この図でもっともピークの遅い日本で4月12日がピークです。
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(以下:専門家会議)は5月1日に“発症日”データに基づく実数の図を公表しました(下図『全国における感染者数の推移(左図:確定日(報告日)、右図:発症日)』)。

 いままで、厚労省が発表のときに用いていた“新規感染者数”はPCR検査を経た“報告日”で、実際の感染から発症まで平均5日、「4日ルール」があるので発症から実際に検査を受け結果が出て報告までさらに1週間とすると、実際の“感染した日”は2週間近く前になります。従って上図の示すように全国の発症日のピークは4月1日です。図はありませんが、実際の感染日は、その約5日前とすると3月末には感染のピークを迎えていたことになります。つまり、国全体としてみると4月7日の自粛要請前にすでに感染拡大は縮小に向かっていたということです。

 さて、では国内での感染の動向について見てみます。
 感染症の広がり具合の指標の一つに“実効再生産数=「1人の感染者から実際に直接感染する人の人数」”があります。先の専門家会議の5月1日の提言の中に、全国における推定感染時刻を踏まえた実効再生産数の推移をみたものが図3です。3月25日には2.0であったのが、その後減少基調となり、4月1日は1を切り、4月10日の時点で0.7まで下がっています。なお、この提言では東京都の実効再生産数の推移も見ていて、同様に減少基調となり4月10日には0.5まで下がっています。

 専門家会議では、「未だ、かなりのかなりの数の新規感染者数を認めており、・・・3月中旬前後の新規感染者数の水準までは下回っていない状況」なので、引き続きこの水準が維持されるか注視していくひつようがある、と述べています。

【都道府県別の感染状況】
 感染症の全国への広がりを見てみます。下図は各都道府県の累積感染者を人口10万人当たりで見たものです。

13特定警戒都道府県は、東京・石川・大阪など確かに相対的に多いですが、岩手など一部の県を除いて全国的に感染者が生じています。
 次にこれらの感染者の発症を直近3週間で見てみます。次頁の図をご覧ください。
感染者の発生していない岩手と1週間以内に初めて感染者が出た青森を除き、全ての都道府県で新規感染者数は週を追うごとに減少しています。つまり、この3週間で見る限り国際空港のある都市部から地方に感染が広がっているフェーズではなく、すでに全国的に減少しているのです。メディアが喧伝しているような「感染が拡大」はすでに終わっています。
 なお、繰り返しになりますが実際に人が感染した日は、“新規感染者”として報告された日より2週間近く前です。ということは、今現在あらたに感染した人はもっと少なくなってきているということです。

【医療供給体制】
 専門家会議がもうひとつ取り上げていたのが、“医療崩壊”への懸念です。5月4日の提言でも「入院患者を引き受ける医療機関への負荷は現状でもぎりぎりの状況にある」と述べられています。ところが5月1日の「新型コロナウイルス感染症入院患者受入病床数等」(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000628694.pdf)では、「ピーク時に新型コロナウイルス感染症患者が利用する病床として」全国の入院患者受入確保病床数は14486床、宿泊施設受入可能室数は16113室に対して、感染者(退院者等を除くPCR陽性者)は8711人です。感染者の収容先内訳は、入院者5558、宿泊療養者862、自宅療養者1984、社会福祉施設等147、確認中160です。
 確保病床数に対して、実際の感染者は6割にも関わらず、病院外で療養する者が感染者の1/3います。5月1日現在、人工呼吸を要する重症患者は全国で328人、人工肺(ECMO)は43人なので、対応できているように思います。むしろ、これら以外の軽中症者を受け入れる医療施設が必ずしも機能していないと考えられます。そのような医療施設は、大半が民営で、感染者を出したらしばらく診療停止せざるを得なくなり経営の危険が生じるので患者の受け入れに消極的になり、積極的に患者を受け入れる施設にしわ寄せがいきがちです。マスクやエプロンなどの必需消耗品が不足しているとも伺います。実態調査がなされているなら国民として受療行動の指針になるのでその説明がほしいところです。

 ここまでお読みくださり誠にありがとうございます。