熊鈴考ー人はなぜ考えなくなったのか

スピリチュアル矢作直樹

著者:矢作直樹

ISBN:978-4792608057

判型:四六判/並製

定価:1980円(税込み)

熊が生息しない冬山のアルプスの稜線などでも、熊鈴を鳴らす登山者が増えてしまったことから始まる著者の疑問。
マスク、熊鈴、専門家、科学、安全、便利、AI――
私たちは、いつから「自分で考える」ことを手放したのか。
日本人を思い出すための20のケース・スタディ。

【目次】

はじめに 洞窟の中の安心
 ―なぜ私は熊鈴に違和感を覚えたのか

第一章 不安と同調―なぜ人は、自分で観なくなるのか
ケース1 マスク―なぜ人は外せなくなったのか 
マスクは自己演出と自己防御の同時実行 
安心を外に預けることで弱まる感受性 
ケース2 熊鈴―なぜ人は、森で音を鳴らし続けるのか 
熊鈴が悪いのではない  
山の静けさの中で失われるもの  
恐れが判断を奪う  
では、どうすれば再び考えられるようになるのか  
熊鈴が鳴り止むとき 
ケース3 「専門家が言っている」―なぜ人は、自分で考えなくなるのか 
専門家は考えるための材料を提供する人  
最初に結論を決めない  
考える前に答えを受け取る習慣を辞める 
ケース4 「科学的」―思考停止のための便利な言葉 
科学とは答えではなく問い続ける方法  
感情のフィルターを入れずに読むことの難しさ  
無知の知を思い出す  
見られていないことの余白  
単純化は世界の豊かさを見失う 
ケース5 ゼロリスク―なぜ人は、不確実性に耐えられなくなったのか 
責任とは自分が静かに背負うもの  
人が持つ生き物としての感覚  
ゼロリスクを求める社会 
ケース6 消毒社会―なぜ人は、菌だけを敵にするのか 
日常生活は無菌環境ではない  
生命とは防御ではなく適応の技術  
少し不完全で少し揺らぎながら、全体としてしっくりくる 
ケース7 AI依存―なぜ人は、考える前に答えを聞くのか 
答えは速く得るけれど、世界と出会えない  
感性は身体を通しても働く 
ケース8 GPS登山―なぜ人は、地形を読まなくなったのか 
位置情報を得ることと、山を読むことは違う  
迷った方が山を覚えている  
山を読むことで自分を読む 
ケース9 「空気」―なぜ人は、皆と同じで安心するのか 
生存戦略としての空気を読む  
人間は群れるために生きてきたわけではない 

第二章 見ないことで安心する社会―制度疲労と前提停止
ケース10 常識―なぜ人は、皆が正しいと思うと安心するのか 
第一節 常識は便利である―人間社会の省エネ装置 
第二節 常識は時代で変わる―当たり前は、驚くほど流動的である 
食にも常識がある―身体は、平均値だけでは語れない 
第三節 常識とは「皆が見ている現実」である―空気が時間を経て固まったもの 
第四節 常識が危うくなる瞬間―安心は、時に思考を止める 
第五節 常識から離れる方法―敵にならず、一歩離れる 
ケース11 日本国憲法―なぜ人は、出自を見なくなるのか 
憲法とは何か  
憲法は国家だけのものではない  
制度もまた、人間がつくる  
国家もまた成熟していく 
ケース12 新コロ騒動―なぜ制度疲労を直視しないのか 
第一節 制度疲労とは何か―なぜ良い制度でも、時間とともに機能しなくなるのか 
制度は時間とともに疲れる  
制度疲労とは失敗ではない  
制度疲労は平時には見えにくい  
制度疲労は有事に露出する 
第二節 新コロは「病気」だけの問題だったのか―社会構造の限界が同時に露出した 
医療―高度化した医療と日常医療の分断  
行政―正確さと迅速さの両立の難しさ  
情報―情報過多の時代に、考える力が問われた  
教育―答えのない問いを扱う力  
流通―効率化の先に失われた余白 
第三節 制度疲労は見えにくい―なぜ人は、構造より現象を見るのか 
平時余裕の消失―効率化は、必ずしも強さではない  
急性期偏重と、有事への備え  
公衆衛生と医療の分断―俯瞰して考える力  
行政の縦割り―平時最適化と有事対応のずれ  
データ運用―情報はあっても、つながっていない 
第四節 なぜ直視できないのか―制度を守ることは、時に自分を守ることになる 
制度は、人がつくる  
制度を否定すると、自分を否定した気になる  
だから人は、運用で耐える  
空気で耐える、善意で耐える  
しかし、構造は残る 
第五節 制度疲労は失敗ではない―限界が見えたということ 
前提を問い直す  
法律と国家  
行政と教育  
医療と経済と会社  
家庭という最小の制度 
ケース13 「安全第一」―なぜ社会は、自由より管理を選ぶのか 
安全はマニュアルだけではなく注意力によって守られる  
考えることを第一に  
感受性を高めることが大事 
ケース14 車社会―なぜ人は、自分の身体で距離を測らなくなったのか 
車社会で弱まる地域社会  
便利さで失ったもの 
ケース15 「便利」―なぜ人は、余白を失ったのか 
速さと効率で見えなくなったもの  
便利さで感謝を忘れる  
育児は親も育つ作業  
失われた待つという能力 

第三章 日本人を思い出す―失われた感性を取り戻すために
ケース16 和語―なぜ日本語は「にじむ」のか 
言葉は世界の見方をつくる  
和語は関係性を切り離さない  
日本語は「にじむ」  
名前をつけすぎる時代  
なぜ現代人は苦しくなったのか  
和語の奥にあったもの  
和語は感性を取り戻す入口 
ケース17 審美眼―日本文化は何を美しいとしてきたのか 
効率と無縁の美しさ  
審美眼は生命力を支える  
合理性と審美眼が文化を育てる  
日常を潤す力 
ケース18 惟神―自然に合わせて生きる 
人間の都合で動かない自然  
日本人と自然  
流れに従うとは何か 
ケース19 武士道―恐怖に呑まれないという技術 
「侍殿防護の神勅」へ  
利他の精神としての武士道  
恐怖に呑まれないという技術 
ケース20 中今―なぜ人は、未来不安で感性を失うのか 
未来へ飛ぶ心  
不安は人をどこへ連れていくのか  
過去へ戻る心  
人は思っているほど今にいない  
山が教えてくれたこと  
臨床の現場が教えてくれたこと  
中今とは何か  
中今を外れるとどうなるか  
どうすれば中今に近づけるか  
結び 

終 章 静けさを取り戻す―「日本人を思い出す」ということ
私たちは何を失ったのか  
便利さと引き換えに失ったもの  
日本人が大切にしてきたもの  
静けさの中に答えがある
日本人を思い出すということ