ロイヤル旋風に酔わせる
ヌニェス&ムンタギロフの至芸 アクリ瑠嘉、前田紗江の活躍
英国ロイヤル・バレエ団日本公演『リーズの結婚』
渡辺 真弓

【撮影:Kiyonori Hasegawa】
英国ロイヤル・バレエ団が3年ぶりに来日し、7月3日〜5日、『リーズの結婚』、10日〜12日、『ジゼル』を上演した。
高田茜をはじめ、スティーヴン・マックレーとナターリヤ・オシポワの看板スターたちが、いずれも怪我で降板し、配役の変更が生じたが、さすがカヴァーも万全で、いずれの公演も大入り満員の大盛況。連日、ロイヤル旋風が巻き起こり、感性が覚醒されたような気分を味わった。
開幕の『リーズの結婚』の会場は、リニューアルオープンした川口総合文化センター・リリア。
ロイヤル・バレエ団が日本で『リーズの結婚』を上演するのは、16年ぶり。前回は、マックレーらが活躍していた。こうして見ると、意外に本家の『リーズの結婚』の実演を見る機会は少なく、貴重に思えてくる。幕が開いた途端、目を見張ったのは、一人一人が、舞台で役を生きていて、完全な俳優であったこと。主役から群舞に至るまで舞台から発せられる熱量が半端ではなく、とにかく圧倒された。
主役を演じたマリアネラ・ヌニェス&ワディム・ムンタギロフのペアは、どちらかというと、古典バレエのプリンセスとプリンスの第一人者の印象が強かったが、アシュトンのユーモア溢れる名作で、イメージ一新。農村のカップルを演じても、卓越したテクニックに気品があり、 演技の面では俳優そのものの風格があり、感嘆させられた。
主役を自家薬籠中のものとした丁々発止のやり取りに加え、リボンの扱いや高難度のリフトなど様々なトリックに満ちたアシュトンの振付をいとも易々と自然な流れの中でこなしていく。作品の極意を伝えた王道の踊りだった。あまりの見事さに、1曲踊るたびに、客席から盛大な拍手が送られた。
アラン役のアクリ瑠嘉は、2019年からファースト・ソリストを務め、メリハリのある演技で、堂々と主役二人と渡り合った。

【撮影:Hidemi Seto】
翌日のマチネは、アナ・ローズ・オサリヴァンとアクリ瑠嘉の主演。アクリは、マックレーの代役に立ったが、前日にアランという全くキャラクターが対照的な役を演じたばかりなのに、変身ぶりが鮮やかだった。
オサリヴァンは、ほんわかとしたソフトな雰囲気がリーズ役にピッタリで、第2幕の母親シモーヌとのダンスの応酬など達者な演技が目を奪う。のどかな田園バレエの醍醐味を満喫させた。

【撮影:Hidemi Seto】
次の日のマチネは、前田紗江(ファースト・ソリスト)とカルヴィン・リチャードソンの主演。高田茜の代役を務めた前田は、可憐な容姿で、こちらもリーズに適役。踊りも溌剌とし、リチャードソンとのパートナーシップも終始和やかに。
どのペアもそれぞれ個性的だったが、参考までにそのほかの組み合わせも挙げておこう。4日夜:マヤラ・マグり&マシュー・ボール、5日夜:フランチェスカ・ヘイワード&マルセリーノ・サンべ。
リーズとコーラスに加え、もう一人の主役は、金持ちのぶどう園主の息子アランである。少々風変わりだが、リーズを慕う気持ちはコーラスと変わらず、婚約指輪をはめることができなかった時の演技は、主役二人に勝るとも劣らぬ見せ場となった。所見のリアム・ボスウェルとマルコ・マッシャーリは、共に役への没入ぶりが凄まじく、前者の哀愁を漂わせた役作りと、後者の直向きな役作りそれぞれに強烈な主張が見られ、豊富な人材を擁するロイヤル・バレエの底力を見た思いがした。
ホセ・サラサール指揮東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の演奏が、どれほど舞台を活気づけていたことだろう。躍動感と抒情性に富んだエロール(エロルド)の音楽を心ゆくまで堪能させた。
(7月3日、4日昼、5日昼 川口総合文化センター・リリア)

