5年ぶり来日の英国ロイヤル・オペラが記者会見

6月22日から《リゴレット》と《トゥーランドット》

英国ロイヤル・オペラ開幕記者会見
左からカマレナ、シエラ、パッパーノ、ラングワナシャ、ミアーズ、ジェイド
©️Ayano Tomozawa

英国ロイヤル・オペラが 5 年ぶり7回目の来日を果たした。東京・横浜公演に先立ち、6月18日、都内のホテルで記者会見を行った。
音楽監督/指揮者のアントニオ・パッパーノ、オペラ・ディレクターのオリヴァー・ミアーズに4名の歌手陣が登壇、日本公演の見どころを語った。
《リゴレット》表題役のエティエンヌ・デュピュイはフライトの変更により会見には欠席。《トゥーランドット》に表題役で出演を予定していたソンドラ・ラドヴァノフスキーは、体調不良のため、来日することができなくなり、代わって、マイダ・フンデリングが同役を演じる。フンデリングは、チュニジア出身で、世界各地の歌劇場で活躍中。2026年には、英国ロイヤル・オペラでトゥーランドットを歌うことが決定しているなど、今注目のソプラノである。

2017年からオペラ・ディレクターを務めるミアーズ  ©️Ayano Tomozawa

まずディレクターのミアーズから挨拶があった。
「今の時代を代表する歌手とマエストロ、そしてオーケストラと合唱と共に参加できることに感謝したい。2021年初演の私のプロダクションである《リゴレット》を持ってこられたのが嬉しい。火花が散るような素晴らしい舞台です。もう一つは1984年のセルバン演出《トゥーランドット》。劇場の最も古い演目の一つで、物語性からセット、衣裳、振付など全てが音楽と一体化しているのが長く愛される理由だろう。22年間音楽監督を務めたパッパーノにとって最後のオペラ公演を東京で行えるとは。多くの皆様に楽しんでいただければ」
 ロイヤル・オペラハウスについては、「世界トップのオペラハウスと自負している。ただそれに何か特別なものがあるとすれば、ロンドンという地理的なもので、多くの劇場があること。その劇場とは何たるか、音楽のみならず、演劇を含めた全ての劇場としての役割を持っていることです」

英国ロイヤル・オペラ開幕記者会見
時折、指揮しているような身振りを交えて語るパッパーノ  ©️Ayano Tomozawa

続いてパッパーノが、今回上演される2演目の魅力を紹介。
「《リゴレット》は、構造から物語性、メロディー、それに原作はヴィクトル・ユゴーだが、シェイクスピアを彷彿とさせる完成度の高さ、そして新しさを持ち合わせた完璧なオペラ。それと組み合わせる《トゥーランドット》は、全く違う。オラトリオのように儀式的な舞踊が入った特別なオペラで、ストラヴィンスキーからR・シュトラウス、シマノフスキに至るまで全てを知った上で想像のアジアの世界を書き上げたもの。ヴェルディとプッチーニ、最高のコンビネーションがここにできたと思う」
音楽監督としての22年間を振り返り、「様々な作品を上演してきたが、一つ一つに意味がある。それぞれの体験の質の高さが収穫」と述べた。

歌手陣も各々、自身が演じる役について抱負を語った。 

《リゴレット》のマントヴァ公爵を歌うハヴィエル・カマレナは初来日。
「やっと来られて嬉しい。偉大なテノールたちが歌ってきた役を演じられるのは光栄。『女心の歌』は有名だが、私の独自のアプローチをぜひ見てほしい」

カラフを歌うブライアン・ジェイド。
「カラフはテノールにとっての重要なレパートリーの一つ。『誰も寝てはならぬ』は超名アリア。カラフは夢を叶える自信があって、勝利を確信している。最初から最後まで全力疾走しなければならない」

ジルダ役のネイディーン・シエラ。
「マエストロとの最初のオペラがこの作品だったので、ジルダは私にとって大きな意味を持つ役。希望や喜び、勇気などあらゆるものをもたらしてくれた。実は、一度、武蔵野のコンサートのために一度来日したことがあり、5日間の素晴らしい体験は忘れられない」

リュー役のマサネバ・セシリア・ラングワナシャは初来日。
「この役は、プロとして初めて正式に歌った役。3つの美しいアリアがあって、オペラそのものもとても壮大なので、皆様にも楽しんでいただきたい」

ジルダもリューも共に他者の犠牲となって死ぬ運命にある。この点について、シエラが「ジルダが唯一受けてきた教育はキリスト教。自分自身をキリストになぞらえて生涯を重ねた。ですからジルダの死は信仰に基づいたもの。オペラではよく人が死ぬが、悲劇のようにインパクトが強い方が心に残るもの。オペラにはそういう力がある」と語れば、ラングワナシャは「リューは忠実な使用人で、自分が第一ではない。カラフとは身分が違い、彼が愛しているのはトゥーランドット。愛する者を守るために死を選ぶのは自然なことだった」と解釈について述べた。

名匠パッパーノ&英国ロイヤル・オペラの集大成といえる舞台は、いよいよ今週末から幕を開ける。

★6月22日(土)神奈川県民ホールで開幕する『リゴレット』の批評を速報で掲載する予定です。 https://www.garo.co.jp/onstage/

【公演日程】
●《リゴレット》
6月22日(土)3時、25日(火)1時 
会場:神奈川県民ホール
6月28日(金)6時半、30日(日)3時
会場:NHKホール
●《トゥーランドット》
6月23日日(日)3時、26日(水)6時半、29日(土)3時
7月2日(火)3時
会場:東京文化会館

【問合せ】NBS ☎︎03・3791・8888