『ドン・キホーテ』佳境に

〜 シーズン開幕 新国立劇場バレエ団 〜 

吉田都舞踊芸術監督による最初のシーズンの公演『ドン・キホーテ』が10月23日に開幕、6キャストによる7公演が佳境に入っている。当初ライト版の『白鳥の湖』の新制作で開幕する予定が、新型コロナウイルス禍の現況を踏まえ、アレクセイ・ファジェ—チェフ版『ドン・キホーテ』に変更されたもの。大原永子前監督の任期最後を飾る予定だった人気演目が、新体制に引き継がれたわけである。久々の全幕ものでのシーズン開幕とあって、舞台に賭ける劇場側の熱意もひとしお、終演後は客席総立ちとなる活況を呈している。

今回の公演で特筆されるのは、主役のみならず、ドン・キホーテやサンチョ・パンサ等に至るまで、演技が非常にきめ細やかで、物語の面白さが倍加したこと。新監督独自の視線が感じられる。整然として洗練されたアンサンブルには、2年前に来日したマリインスキー・バレエのステージを想起させる趣があった。

『ドン・キホーテ』第1幕より、初日を飾った米沢唯と井澤駿のペア(撮影 鹿摩隆司)

初日は、米沢唯と井澤駿のプリンシパル・ペアを筆頭に、他日に主演するソリストたちが脇を固めたので、隅々まで目が離せない。二日目の昼の部は木村優里と渡邊峻郁の新進ペア。いずれも難度の高い技巧の競演が興奮を誘う。例えば、キトリは、第三幕のグラン・フェッテでトリプル回転を平然と連発、バジルの豪快な跳躍や回転技の完成度の高さに目を見張る。

『ドン・キホーテ』第3幕のグラン・パ・ド・ドゥを踊る米沢唯と井澤駿(撮影 鹿摩隆司)

米沢は、温かみのある役作りで、ヴァリエーションは淀みなく、緩急自在、真珠を転がすようにスムーズな踊りが魅力だ。一方、初日に森の女王を優雅に演じた木村は、翌日は一転して、可憐な街娘に変身、華のある佇まいが実に舞台映えする。

井澤扮するバジルは、凛々しいオーラを惜しみなく発散。二日目にはエスパーダで颯爽と登場するなど絶好調。片や渡邊は、演技に遊び心があり、軽快かつシャープな動きが目を惹きつける。

ボレロを益田裕子と好演した速水渉悟は、31日(土)のバジル・デビューに期待がかかる。

冨田実里指揮東京フィルが、ダンサーと絶妙の呼吸を見せ、公演を支えた。大原体制の成果に、吉田時代の新風が吹き込まれた印象で、幸先良いスタートを切った。

 渡辺 真弓
(他日公演も含め、詳細は本紙にて続報の予定)

★この後の公演日程及び主演キャストは次の通り。
 ◇10月31日(土)13:00 池田理沙子、奥村康祐
 ◇10月31日(土)18:30 米沢唯、速水渉悟
  ◇11月1日(日)14:00 小野絢子、福岡雄大
【お問い合わせ】☎︎03・5352・9999
※初の試みとして、「チコちゃんと一緒に課外授業製作委員会」と新国立劇場の共催によりオンライン有料配信を実施。※配信は11月30日までの予定。